団体ツアーの旅行においては、アクシデントやトラブルは絶対厳禁、
されど、個人旅行となると、これこそが旅の醍醐味といえるのかもしれない。
これは昨年夏、イタリア、プッリャ州バーリにあるアルベロベッロという小さな町でおこった小さなできごと。
出発前、家内がおいらに「ホテルのスタッフさんがメールで、トルコ風の健康プログラム勧めてきたけど行ってみる?なんかリラックスできるらしいよぉ~」と。
おいら、特に興味もなく、どっちでもエエかと・・
しかも、話をもちかけてきた家内は「息子と買い物に行くから私らは行かない」っと。
なんや、おれ、ひとりでかぁ~
「でも、買い物よりはエエかも」と、予約してもらうことに。
予約は国内でインターネットでできる、まったく便利な世の中になったものだ。
・・・・・
旅の最終目的地、アルベロベッロに到着。
日本人観光客を見かけることもなく、(この地に嫁いだ日本人女性の土産店はあったが)異国情緒に満ち溢れている。
まちをブラブラして食事をした後、家内らと別れ別行動、ここからはおいらひとり、
早速、そのトルコ風呂店(屋?)へ、
英語が堪能な家内は、おいらの通訳も兼ねていたので、いなくなると超不安、どないすんねん。
トルコ風呂店まではホテルのスタッフ(以後、兄ちゃん)さんが車で送ってくれることに・・
えっ、他にお客さんおらへん、おれ、ひとりやん。
道中、この兄ちゃんおれのこと、熟れたツーリストと思っているのかっ、やたらと英語で喋ってくる。
なに言うてるのかサッパリ分からへんしぃ~
適当に「イエ~ス」って、応えていたら、さすがに兄ちゃんも察したのか急に喋ってこなくなった。
アウェーモード全開、この空気、早く脱したい。
おれは国内ではこういう場はけっこう強いが、喋れないという壁は厚い。
そうこうしてうちにトルコ風呂店に到着。
受付に案内されると、わずかながらまだセクシーさを漂わせる巨漢のおばちゃん?もとい施術師さん?が立っていた。
で、兄ちゃん、「時間が来れば迎えにくる」的なことを言って、おいらをおばちゃんに引き渡し去っていった。
なんか、どんどん深みにはまっていく気がするなぁ~
店内には、観光客どころか地元民もいない、お客さんはおれ一人、しかも、この店、どこかやばい?そんな雰囲気が漂う。
店内でのシステムもまったく分からないし、聞くにも言葉は通じない。
周りのお客さんの見よう見まねという思惑も無惨にも打ち砕かれた。
早速、地下の部屋に案内され、着替えの場所やお風呂の説明をしてくれた。
「服脱いで風呂に入って、その後はここでお茶を飲んでいろ」、そこまではなんとなく分かった。
一通り説明を終えると、おばちゃん、あっさり立ち去ってしまった。
えっ、おれここからどないしたらエエのん??
とりあえず、風呂に入ろ。
大きな部屋の中に何種類かのお風呂とサウナがあって、
これがまた予想以上に妖しげな雰囲気をかもし出している。
中は薄暗く、ピンクや紫のスポットライトがチカチカ、
オリエンタル風の奇妙なBGMに加えお香の香りがプンプン、
なんともエキゾチックな感じ。
これって、マジやばいかもぉ~
とりあえず、妖しげな泡風呂に入ってみると、
「ぬるっ」
アカン、風邪ひく、
やばい、サウナやっ、
ここも妖しげな雰囲気ではあるが、一応普通のサウナ。
こんな場所におれひとり裸でいると、流石にこの後の展開が気にならないといえば嘘になる。
不安の域を超え、もはやこれは恐怖?
とりあえず、風呂→サウナ→風呂→サウナっと、繰り返していたが、いったいいつまでするねん。
もうけっこうな時間たってるしぃ~(いや、実際の時間よりかなり長く感じたのかも)
おれ、どうしたらええんやろ、
このままおばちゃん来るの待っといたらエエんやろかぁ~
もし、ここで着替えて受付にあがったら、
「お客さんなにしてますのん、風呂で待っときいうたでしょ~」
っと、唖然とした態度をとられるか、或いは失笑されそうな気もするしぃ~
逆にここらであがらないと、
「お客さん、いったいいつまで入ってますのん」
っと、それはそれで唖然となられそうやしぃ~
う~~ルールが分からん、どないしたらエエんやぁ~
それにしても風呂はもう限界やぁ~
とりあえずソファーに座って、このわけのわからんお茶でも飲んでよっ、
それが無難やぁ~もう少しこれで時間かせご、そのうち呼びに来るやろぉ~
それにしてもこの雰囲気、妖しすぎる、リラックスどころか緊張感しかないやんけぇ~
そういえば、トルコ風呂って、かつて日本では・・
でも、あれはあくまで日本式、トルコの人に名前変えてって怒られたんや。
とはいえ、これは家内が思てるのと全然違う感じかもしれへんぞぉ~
もしかしたら○○サービスがある?
その時、あのおばちゃんが出てきたらどないする~
「ノーサンキュー」それとも「チェンジ、プリーズ!」
でも、そんな言うたらおばちゃん傷つくやろなぁ~
それとも唖然?
となると、ここは辛抱(=あくせぷと)すべき?
ここは正直に家内に話しても、これ薦めて予約してくれたのは家内やし、おれに一切の責任はない!
そうなったら、これはもはや事故や!
っと、そんなことを瞑想(妄想)していると、おばちゃん登場!
しかも、おばちゃん、さっきよりセクシー度増してない?いや、おれの錯覚かなぁ~
いったいどうなる、おれ、ピ~ンチ?
ヘルプ、ミー~
でも、その心配は不要だった、
おばちゃん、おれをマッサージ台のある部屋に案内してくれた。
ようやく流れが見えてきた~なんか、一安心。
ここでマッサージしてもらってハイ終わり。
おれは軽やかな身のこなしでマッサージ台に横になった、日本のアカスリと同じ要領やっ(行ったことないけど)。
すると、おばちゃんボーゼン?唖然?
なんやネン!まだ、なんかあるんかぁ~
なんか言ってるけど、なに言うてるんやろぉ~
???
あっ、もしやこれはパンツを脱げと言っているのではないだろうかっ。
でも、もし違ってたらどないすんネン、
おばちゃんビックリ、唖然やん、
こうなったら一か八かやぁ~
恐る恐るパンツを脱ぐと・・
・・・・・
「OK!」
よかった~正解やぁ~
セ~~フ
で、おれの体にオイルを塗ってマッサージしてくれた、
家内は少し過激な強めのマッサージのようなことを言ってたが、そんな感じはまったくない、ぜんぜん普通、ふつう過ぎる、
ってか、これって利いてるの?
このあまりの普通な展開、さっきまでの不安はいったい何だっんだ?
それともおれは何かを別なものを期待していた?
そんなことはない!
で、マッサージが終わると、おばちゃん「ハイ終わり」的なことを言って、あっさり部屋を去っていった。
えっ、終わりって・・?
おれの体、オイルでベタベタやん、これどなして流すネン、シャワーらしきものもないしぃ~
このまま服着たらベトベトやん、普通、流してくれるんとちゃうん、
ある意味、異国情緒?
しゃぁないから、禁断の浴槽で体についたオイル流したった、こういうときは誰もおらへんって便利や~
まさか、おばちゃん、このタイミングで「なにしよるネン」って出てこんわなぁ~
服に着替えて受付に戻ると、しばらくしてホテルの兄ちゃんが迎えにきてくれた。
そのときの安堵感、爽快感、開放感?
無事、生還?これぞ旅の醍醐味?
帰りの車中、兄ちゃんが「エンジョイ?」って聞いてきたので、とりあえず「イエス」っと・・
すると兄ちゃん「グッチョイス!」
どこがやネン、
話のネタ的にはグッチョイスだったかもしれないが、
ここがホテルお薦めのスポットというのは理解に苦しむ。
アルベロベッロらしさどころか、イタリア感すらまったくない、
しかも、どこがトルコ風呂やねん、なんちゃってトルコ風呂やんけぇ~
まっ、まさか、ホテルとこのなんちゃって、実はグル?
そんな体験の後だったからか、
目の前に浮かぶ夕暮れ時のアルベロベッロの町並みがとても美しく魅力的に見えた。
これもあれも含めて旅って良いものだ。
以上、アルベロベッロでの出来事でした。